ProJetX60シリーズ / 建築・建設
手作業から最新技術へ。サグラダ・ファミリア完成へ近づける”3Dプリンターの活用” ※海外事例※
スペイン・バルセロナで建設中の世界遺産「サグラダ・ファミリア大聖堂」
ガウディの死後、彼の幾何学的なデザインを捉え完成させるのは、遠い夢に思われた。
しかし人間の限界を超え、建設モデルを表現できる"3Dプリンター"が修復作業を加速!
サグラダ・ファミリアの完成の夢は近々叶うのかもしれません。
建築
サグラダ・ファミリア
“表面や形状がとても複雑なので、ガウディのデザインを2次元でとらえることは、
建築的な側面では意味をなさない。もしガウディが生きていたら、3Dテクノロジーの
先駆者となっていただろう。なぜなら彼の作品の多くは既に3次元で表現されているの
だから。”
Jordi Coll
建築チーム
チーフ
1883年末にサグラダ・ファミリアの設計建築を委ねられたアントニ・ガウディは、1926年に亡くなるまで生涯をかけてこの仕事に取り組んだ。その後も彼の構想に基づいて後世の建築家達が作業を続けている。
1882年当時、建築家、れんが職人、石工職人等のスタッフは伝統的な図面を使って仕事を進めていたが、ガウディは柱のレイアウト以外には役に立たない二次元の図面ではなく、別の手法を使うべきだと気が付いた。
彼は、複雑な形状のサグラダ・ファミリアには3次元的なアプローチが必要だと考えていた。デザインを可視化し、構造的な実現可能性を検証するための建築模型が必要となり、早いうちから造形職人や彫刻家が集められた。この時の検証結果は、その後も活かされている。
“表面や形状がとても複雑なので、ガウディのデザインを2次元でとらえることは建築的な側面では意味をなさない”と、建築家チーム チーフのJordi Collは語る。
ガウディは形の面でも概念的な面でもチャレンジしつづけるイノベータであり、利用できる限りの最先端技術をいつも使っていた。
GOAL(目標)
1926年のガウディの死、そしてスペイン内戦でガウディの工房や彼の遺した物が破壊され、サグラダ・ファミリアの完成は多くの弟子や建築愛好家、更にはカタルーニャの人々にとっての夢となった。
残ったものは粉々になってしまったかけらも含めて有志の手によって保存され、これらの小さなかけらは壮大な夢への第一歩となった。それは、ガウディの造りたかったサグラダ・ファミリアの完成。
CHALLENGE(課題)
現在の教会の技術スタッフと経営陣はガウディのプロジェクトの複雑さを研究し、課題をまとめた。課題は以下の通りである。
- 壊された物のかけらから、石膏モデルのかけらの目録を作成し、体系づける
- 失ったかけらを見つけるため、本来の形に関する仮説を発展させる
- 作業の前に、石膏で失われた部分の推測をする
- 建築プランの検証作業を行う
- 本物のパーツで組立てを行う(コンクリート、石、カタルーニャ煉瓦等)
壊されずに残っていた型や資材は、写真や文書、製図と同じくらいプロジェクトの手助けになった。ガウディのオリジナルモデルは必要に応じて何度も再興、再生、 改訂、修正された。これは元のプロジェクトの再現性や技術的な可能性を保証するためである。
数十年間、この仕事は手作業で行われたが、それには多くの時間とコストがかかり、材料にもまた多額の資金が必要だった。加えて、人間の手だけでは1/25以下のちゃんとした模型を作ることはできなかった。
サグラダ・ファミリア建築の資金は寄付金であり、この時点では、完成はとても遠い夢と思えた。
SOLUTION(解決策)
建築家のJordi Coll、Jordi Fauli、Mark Burryは3D CADソフトウェアのような、航空機や自動車のエンジニアリングで使用されている、最先端技術の研究をはじめた。
そして、データを解釈した後は課題となっていた部分の3Dデータを作成した。
3Dデータは、彼らにガウディのデザイン特有の数式や比率を理解させ、長い時間をかけて少しずつその秘密を明らかにしていった。
最も革命的なことは3Dプリンターの導入である。これにより、3D CADの図面を自動的に、かつてない精細さで、しかもほんの数時間で実体化することが可能になった。
サクラダ・ファミリアの工房は2台のProJetCJPを所有し、スタッフの仕事の上で大いに手助けとなった。彼らは複雑な謎の全体像を解明するための構造計算等に頭を使うことを専念し、出来上がった3D CADデータはSpectrum Z510sが申し分なくプリントし続ける。
RESULTS(結果)
より良いモデル
ProJetCJP 3Dプリンターは、たやすく、手作業より細部を正確に再現することができる
より少ない材料
1/50または1/100のスケール(ガウディが想定していたスケールの1/10または1/25)での造形が可能。余った材料は再利用可能
より多くのモデルをより速く
大きい造形エリア、1時間に2~3cm積層する高速造形
より良いコミュニケーション
技術スタッフと工事スタッフの相互理解の向上
より少ないエラー
時間と資金の節約
部品の機能性向上
ProJetCJP 3Dプリンターで使われる材料は、サグラダ・ファミリアの元々の材料と類似しており、新旧の部品を組み合わせることができる。サグラダ・ファミリアは2010年には一部が出来上がりは、2030年頃までには完成すると予想されている。
CONCLUSION(終わりに)
ガウディがそうしていたように、最高の技術はすばらしい仕上がりを建築物にもたらしてきた。3D CADと3Dプリントによって3Dモデルは素早く身近なものになった。
エラーテストの過程におけるスピード向上は、建築の発展の重要な要素である。
3Dテクノロジーの奇跡と現在の建築家たちの洞察力の成果で、125年の時を経てサグラダ・ファミリアの内装はガウディの構想に忠実にできあがるところまで近づいた。(その後2010年に完成)
「もしガウディが生きていたら、3Dテクノロジーの先駆者となっていただろう。なぜなら彼の作品の多くは既に3次元で表現されているのだから」とJordi Collは語る。
ガウディの魂が3Dテクノロジーの翼に乗って飛んでいたとしてもきっと誰も驚かないだろうということは、興味深いことである。